有限会社 オート司馬(しま)。
バブル期の面影残す閑静な住宅街の一角にテッちゃんの店はあった。
「自動車販売・整備・車検・板金」と、チョッと大きめな看板が目立つだけの店構え。
社長本人を前にして、僕は「テッちゃん」と呼んだ事は1度も無い。
店に来るお客さんの何人かが「テッちゃん」て呼んでるだけ。
友人の紹介で
Z400のOHを依頼に持ち込んだ時、たまたま居合わせたお客さんと向かい合って座りました。
ボソっと一言・・・「珍しいの乗ってるね〜?」
50代前半位のイカツイ方でしたが話かけてくれました。
「はぁ・・バイクの修理やってくれるって聞いたもんで・・・」と答えを返してタバコを一服。
「テツの所にはたま〜に来るんだよ、こんなチョッと見た事無いバイクがね。」
首をゆっくり回しながらその男性は立ち上がり・・おもむろにコーヒーメーカーからコーヒーを僕に持ってきてくれました。
「あの〜・・社長さんとはお知り合いなんですか?」
もらったコーヒーをすすりながら問いかけると・・・・
「テツと? だなぁ〜幼馴染みなんだよ。バイクも車も一緒に遊んでた。テツは昔っからブッ壊すのが好きでね、誰に習うって事無しに分解ばっかしてたもんだよ。あの頃からテツは機械物触るのが好きだったんだよ。」
「壊すのが・・・専門?・・ですか・・?」
僕はコーヒーをもう一口、口に含み直した。
「あ〜壊した壊した。自分のだけじゃ物足りなくなると俺のだろうが他のダチのだろうが触らせろってな」
男性はタバコを吸い話続けた。
「当時理屈なんて分からないで触ってたから、そりゃぁ酷いもんだった。分解したら組直すんだけど、いい加減だからまともに動かなくなってな、それでまた分解。そんな事ばっかしてたからだと思うよ、今この仕事してんの。高校出て東京行って・・なんとかって言う車屋に就職して、それからだろう・・ちゃんと整備出来るようになったの。」
見かけに寄らず案外話す客だなぁ〜と思いながら話を聞いていた僕。
「お待たせしましたね」
歳の割りにとても低姿勢な司馬社長が現れたのはその時で、僕は振り返り挨拶をしました。
「山ちゃん、俺の事なに話してたん?」とイカツイ客の隣に座ったテッちゃん。
「聞こえてたか?」の問いに「狭い店だもん」となかなか良い雰囲気をかもし出してました。
「
Z400ひと通り眺めさせてもらいました。奇麗ですね。大事にされてるのが良く分かります。」
とニコやかに話てくれました。
「買って1年はなんとか乗ってたんですが・・・近くに診てくれる店が無くて・・・」と僕。
「看板上げてれば何処でも診てくれると思うけどね・・・ただこの手のは・・まず部品がメーカーから出ないでしょ?どんな状態かも分からない。手をかけてトラブルが出たら後々まで面倒見なきゃならないし、正直面倒臭がられるんだろうね・・・。でも直りますよ!調子良くしてみせます。」
テッちゃんがカッコイイ親父に映った瞬間でした。
「特にこの手の2気筒が好きでね〜」
そう言うテッちゃんの店の片隅には奇麗な
HONDA CL250があります。
そのCLを見ながらお茶が飲めるような店内。
表には整備待ちの自動車が数台停まってて、けして
オートバイを預かるような雰囲気には見えない店。
※物語なのでフィクションです