すでに売約済みですが、面白いので書いてみました。
このミニキャブトラックは走行83000km、一応ワンオーナーなんですが、外装がベコベコでキズだらけ、シートは破れまくりとスゴイクルマです。が、その外見からは到底想像もつかないすばらしい点があります。それはしっかり整備をされていたこと。
三菱のディーラーでしっかりと整備されてきた痕跡がアチコチに見受けられます。実際、記録簿にもその様子が詳しく書き込まれていて、調子の良さを実証しています。
こんなクルマを捨ててしまうのはあまりにももったいないと思いませんか?そこで蘇生術を施し、商品にすることにしました。お買い上げいただいたお客さんは、私のプライベートでお世話になっているあるお店で「安い軽トラック」が欲しいということでこのミニキャブを売ることになりました。
右側のヘッドライトの上がベッコリヘコんでいました。商品にする以上、「顔は命」ということで、板金をしなければなりません。しかし、当店は整備は経験豊富ですが、板金はほとんど素人に毛が生えたようなもんです。知識はそれなりにあっても道具も経験もありません。それでもいつものように板金屋さんに外注で頼むとそれなりの金額を請求されてしまいます。販売金額は車輌価格94500円と決めていた私は困った末に自分でやってみようと決心しました。それも、道具はほとんど皆無。持っている板金用の道具といえばハンマー、スライディングハンマー(小)、あて金、サンドペーパーくらいです。これらと整備用の道具を駆使して仕上げるのです。某
カー用品店にてパテとスプレー式サフェーサー、スプレー式塗料、タッチアップペイントを購入。作業に取り掛かります。
べっこりへこんだ部分は右ヘッドライトの上の角10Cm四方とアンテナの中間点あたりのピラー部に4X5Cmくらいの2ヶ所が一番大きなものでした。角は一番くぼんだ場所にドリルで穴を開け、スライディングハンマーで徐々に引っ張り出してカタチを整えます。ピラーはあまり大きな穴を開けると強度的に問題なので、4mm程度の小さい穴を開けました。そこにボルトをねじ込んで、それにスライディングハンマーをひっかけて引っ張り出しました。これがハンマーの先がうまく引っかからず、なかなかの苦労モノでした。どうにかカタチになったところで耐水サンドペーパーで周囲を削ります。パテの食いつきを良くするためです。パテは極力薄く塗るほうが仕上がりがキレイです。厚ぼったく塗り付けると、ヒビ割れが起きたり仕上がりもうつくしくありません。可能な限り鉄板を元のカタチに叩き出し、それからパテを盛るようにします。最初は厚めに塗り、耐水ペーパーで削ってカタチを整えます。気泡や塗り残しが必ずあるので、整った後、乾燥させてその部分にふたたびパテを塗りつけます。これを数回繰り返し、最終仕上げにサフェーサーを吹きます。ボディカラーと鉄板の色が出た部分、パテの色等が賑やかでよく解からなかった部分の僅かなヘコミ等がサフェーサーを吹くことで現れてきます。人間の目がいかにいい加減かが解かる瞬間です。再びパテを盛り、削る、の作業を繰り返します。またサフェーサーを吹き確認。何度かやっているうちに良い感じに仕上がりました。塗料を吹き、ボカシ剤を吹きます。これで上の写真のように仕上がります。あとはコンパウンドで塗装面を磨いてツヤを出し、完了です。
ピラー部も同様に行い、塗装は角と一緒に塗りました。アンテナもへこんだ際に破損していたので新品に交換です。美しくしあがりました。
次は後です。荷台に付いている「アオリ」(3方のうち後の1枚)が相当な強さで積荷に押し出され、湾曲しています。さらに当たった部分は鉄板がちぎれ、穴があいていました。アオリの鉄板はボディより厚いハズなのですが、それでも穴が開く程の強い衝撃だったことが覗えます。湾曲に関しては当店の道具ではどうすることもできません。せめて穴だけでも塞ごうということで作業開始。こういう衝撃がよく加わる部分の板金には「ショックパテ」という固まった時の強度が通常よりも強い特殊なパテを使います。幸い、それは持っていたので使えます。ハンマーで裏と表から叩いてめくれ上がった鉄板を戻していきます。完全に穴がふさがるのはこの時点では無理なので大体合うくらいに仕上げます。そこに例のショックパテを盛ります。裏と表から厚めにボッテリ盛り付けて、完全に穴を塞ぎます。乾いたらこれを削り、おおまかにカタチを整えます。さらにその上から通常のパテを盛り、しっかりカタチを整えていきます。ついでなのでアオリの下部分(写真の右側テールランプの上)と左テールランプの取り付け部も板金し、パテを盛りました。
アオリの内側です。
左テールランプの取り付け部です。
あとは前と同様塗装して仕上げます。
運転席のシートです。座面がビリビリに破けていました。純正部品で表皮だけ出るのですが、12000円を越す高額な部品であることを知り、新品は断念。しかし、中古部品を探してもどれもみんなビリビリに破けているのが容易に想像できます。そこで考えました。あえて助手席の中古品を取り寄せました。案の定、中古の助手席は簡単に程度の良いモノが見つかり、すぐに届きました。そのシートから表皮を剥ぎ取ります。まるで新品のように美しい表皮です。これを運転席シートに移植するのです。運転席と助手席では取り付けの構造がまるで違いますが、加工してしっかり取り付けることができました。
完成した座面です。新品と言われても納得してしまうほどの程度の良さです。
ちなみに元の破れた表皮はご覧の通り。凄まじいです。こうしてお金を極力かけず、見違える程の程度になってきたミニキャブトラック。これを94500円で売るのはなんとももったいないと作業を見ていた他のお客さんが口を揃えて言います。まぁ、いつものことですけど。その「これだけやってあってこの価格!?」というのが中野自動車の良いところなので、これからもその調子でやっていければと思います。お買い上げいただいたK店長様、今しばらくお待ちください。