映画を見る約束をした。
ターミナル駅近くの大きなシネコンのチケットを取り、改札口で待ち合わせをした。
約束の時間10分前に、携帯がなった。彼女だった。
「今、起きたとこなの。あと、1時間ぐらいかかる。」
昨日は、会社の同僚と遅くまで飲んでいたらしい。
こんなことになるだろと、予測していたので、映画の開始までは時間があった。
改札口のすぐ脇の、コーヒー・スタンドで待つことにした。
自分は「心の広い人間だ」と言い聞かせつつ、コーヒーを一杯飲み干し、煙草を3本吸ったところで、雲行きがあやしくなってきた。
ビル街の縁から黒雲が湧き上がり、見る見る空を覆った。大粒の雨が、落ちてきた。改札口前は、大急ぎで駆け込む人々でごった返す。そそくさと駅の中に入る人、逆に改札から出て不安そうに空を見上げる人、うろうろと行き場がなく歩き回る人。そんな人ごみの中に、彼女の姿を見つけた。
「待った?」彼女は“お決まり”の言葉を、これ以上ない甘えた口調で言った。
見ると白いTシャツにジーンズ姿なのだが、柄の長いピンク色の傘を片手に持ち、くるぶしまで隠れる半透明のビニール製のレインコートを上に羽織り、膝下まである赤い水玉のゴム長靴を履いてる。
「早く、行こう」
言うより早く、ピンクの傘を開き、手を引っ張る。
“相合傘”とは古風だ。駅からシネコンまで5分もかからない。でも、傘が小さいので体の半分以上が雨に濡れる。しかも、足元はサンダルだったのでジーンズの裾がやたらと重たい。
映画館の入口で、全身ズブヌレになり髪までへこんだ姿を見て
「
ソ・ナ・エあれば
ウ・レ・イなしよ」と、大声で笑う彼女。
ビニールのレインコートを脱ぐと、たすき掛けしたエンジ色のショルダー・バックの細いベルトが、彼女の胸の中央を二分割していた。
白いTシャツに、下着のラインが見えた。
それが、彼女・・・。