錆びつかない魂を、走ることで

 
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家族八景 2012年02月09日(木)
筒井康隆氏の名作「家族八景」が、現在映像作品として地上波TVで放送されている。
関東圏ではTBSで、火曜日の深夜AM0:55からの30分間。
今週の放送で既に3回目となっているが、これが中々面白い。

原作が発表されたのが、1972年。
これまでに何度か映像作品として制作されているが、若かりし頃の多岐川由美が主人公を演じたTBSの「日曜劇場」でのシリーズが最初だと記憶している。同時期に、やはり多岐川主演で続編にあたる「七瀬ふたたび」をNHKが制作。こちらもこれまでキャストを変えての映画やTVになっている。筒井作品の中では、「時をかける少女」に継いで、映像化の多いものと言える。

ちなみに故赤塚不二夫氏が、少年誌にマンガ版を連載したこともある。ギャグ漫画の王様は、さすがの表現力で原作の雰囲気をそのままに描いていたのには驚いた。

「家族八景」は、昨年評判になった「家政婦のミタ」や更に題名の元ネタとなった「家政婦は見た」の元祖とも言える作品だ。発表当時、直木賞の候補にも挙がったとのことだが、受賞は逃している。その理由は、読めばおぼろげながら分る。筒井作品は、おおかたのものが“猛烈な毒”を持ち、そしてそこはかとなく“エロい”。権威ある賞をあげることは、世間にこれを蔓延させることとなる。それが、理由だ(なぁ〜ん・て、ね)。

<余談>長年、権威ある賞とは無縁だった氏だが2002年に紫綬褒章、2010年には菊池寛賞を受賞している。バラエティに出ているだけの変なオジサンではない真の“文豪”。

主人公は、テレパシー能力を持つ美少女 火田七瀬。
彼女は住み込み家政婦として、家庭に入り仕事をしている。表面上は平和そうに見える家族も、その裏では様々な思いが渦巻いており、七瀬のテレパシー能力は、それを感知してしまう。老若男女、夫婦、嫁姑、兄弟姉妹。一つの宇宙ともいえる「家庭」という恐るべき呪縛の痴部が、感応者 七瀬によって露わになる「裏のホームドラマ」がこの物語である。

いわく、タイトルどおり八つの話がある。

「無風地帯」

「澱の呪縛」

「青春賛歌」

「水蜜桃」

「紅蓮菩薩」

「芝生は緑」

「日曜画家」

「亡母渇仰」

各話の内容は、TVをご覧になるか、小説をお読みいただきたい。









今回、七瀬を演じているのは木南 晴夏。
決して美少女・美人のタイプではないが(ファンの方がいたら、失礼)非常に個性的で、特に“目力(めぢから)”の有る女優さんだと思う。それゆえ、感情を表情に出す演技が上手い。またテレパスで読んだ相手の声も、全て彼女が演じ分けているとのこと。これも中々、面白い。

S氏が彼女を始めて見たのは、3・4年前に日本テレビで放映していた「銭ゲバ」(原作:ジョージ秋山)に出演していた時だと思う。富豪のヒロインの妹役で、生まれた時から顔面に大きなアザがあり、コンプレックスから心を閉ざしている。そこにつけ込んだ松山ケンイチ演ずる“銭ゲバ”蒲郡風太郎は、見せかけの優しさで近付き、ついには結婚してしまう。薄幸の少女と言うより、トラウマ的精神を病んだ様子を、やはり独特の表情と演技で演じていたのが印象的だった。その後、映画「20世紀少年」での小泉響子(今日子ではない)役やダイワハウスの賃貸住宅CMで上野樹理の友人役、最近ではテレビ東京のやはり深夜番組で、ドラクエもどきの変なファンタジーに出演していた。

とにかく、存在感がある。実は“この手”の女優さんにS氏はめっぽう弱い。
スケバン刑事は斉藤由貴より南野陽子だし、エコエコアザラクの黒井ミサは映画版の吉野公佳よりTV版の佐伯日菜子につきる。イグアナは菅野美穂以外に考えられない(なんのこっちゃー)。

そして監督は堤幸彦氏。怪作「TRICK」はもとより、TV・映画・PVに舞台演出と幅広く活躍をされているが、この「家族八景」でもその手腕をいかなく発揮している。テンポの良いストーリー展開、セリフの切れ、そこはかとないギャグ。映像作品では難しいとされてきたテレパシー能力を、意外な手法で表現している。作品の舞台を、原作当時の1970年代に設定しており、家庭内にはブラウン管TVや二層式の洗濯機、ダイヤル式黒電話などが登場するが違和感を覚えない。

各話に登場するゲストを楽しい。

第一話「無風地帯」での、元AV女優葉山レイコ女史。第二話「水蜜桃」では、最近バラエティで人気の田山涼成氏や更に映画「三丁目の夕日」の子役 須賀健太くんがそれとは分からない格好で出ていた。第三話「澱の呪縛」には、ぐうたら主婦が清水ミチコ女史で、その旦那で古本屋の主人が橋本じゅん氏だったりする。橋本氏は4年程前、S氏の大好きな漫画家 諸星大二郎氏原作の「栞と紙魚子の怪奇事件簿」でも、AKB前田敦子扮する“紙魚子(しみこ)”の伯父で、古本屋「宇論堂」の主を演じており、深夜ドラマ・マニア(そんなヤツ、いるかー!!!)は、ニヤッとするキャスティングだった(ちなみに、S氏は前田より栞役の南沢奈央の方が好きだ=どうでもいい)。

いずれにしても、今後の話が楽しみだ。