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キズや凹みを直してくれる板金屋の職人ワザ!(2) 2008年11月20日(木)

2. これぞ職人ワザ!(パネル修正編)

パネル修正では様々なツールを使って、車体のキズや凹みを元通りに戻してゆく。車体の損傷状態に同じものは二つとないだけに、職人の勘と経験がものをいう作業だ。

■損傷個所を確認して段取りを決める(長谷川洋司氏)

車体の損傷をくまなく確認し、損傷箇所をチェックする。板金作業、パーツの交換をどのような手順と方法で作業を進めるか、ベストの段取りを決める。
完璧な段取りを組むためには、車の構造とその車が使っている鋼板の性質を見極めなければならない。損傷を見落としたり、作業の手順を間違えると、作業時間が延び、車体に余計なダメージを与えることにもなりかねない。左写真はドア下に位置するサイドシルの損傷。通常の状態ではカバーが掛かっているため見落としやすい。見えないところも損傷の程度を予測し、確認する必要がある。
職人ワザ! 60人のスタッフとともに常時200台近い車を取り扱う
エース・オートサービスでは、常時150〜200台前後の車両を修理しており、そのうち40台ほどが毎日入れ替わる。技術者は板金・塗装を合わせて約60人。「職人はできない奴の言うことは聞いてくれない」と長谷川氏。工場長自らが車体構造と鋼板の性質を熟知していなければ、大勢の職人を束ね、大量の車をさばくことはできないのだ。

■引き出し板金からパテ塗り(エース・オートサービス)

右側のフロントフェンダーとドア、左右のリアフェンダー付近に損傷があった。作業を見せてくれたのは高原智さん。写真はリアフェンダーの凹み。
現在の車体には裏から手の届く箇所がほとんどなく、板金作業の多くは引き出し板金になる。狭い範囲の凹みならば、溶接機でパネルの一点を溶接して引き出す(左写真)。範囲の広い凹みには複数のワッシャを溶接して一気に引っ張る(右写真)。
職人ワザ! パテの厚さは1mm以内
凹みを修正したあとは、パテをヘラで塗りつける。損傷の程度にもよるが、厚さはおよそ1mm以内。パテは熱によるダメージを受けやく、厚く塗ると縮んだり、塗膜ごとはがれてしまうリスクがある。できればパテは使わず、塗膜の厚みの中で調整するのが理想。塗膜をはがした損傷個所をわずかに盛り上げて、塗膜が残っている周囲のパネルと凹凸のないよう合わせるのだ。ただし、新車塗膜の厚みは0.1mm程度。卓越した技術が必要だ。

■アルミの溶接(長谷川洋司氏)

アルミは鉄に比べて軽量で、高級車に使われることが多い。エースオートサービスでは特殊な機械を使って加工している。企業秘密のため、作業風景の公開はNG。写真はアルミの溶接面だ。
アルミは衝撃による亀裂が生じやすい。そのため、摂氏400度程度に熱した状態にしなければならないなど、加工が非常に難しく、取り扱える工場も限られている。左の写真は「リベット」という特殊な金具をアルミに打ち込んだ面。穴を開けないので、水密性にも優れている。右写真はその断面。先端が開き、板の内部に食い込んでいるのがわかる。
職人ワザ! イギリスでメーカーライセンスを取得
エース・オートサービスの溶接機は非常に繊細な作業が可能だが、使いこなすには熟練を要する。長谷川氏はイギリスに渡り、自動車メーカーによる機械取り扱いのライセンスを取得した。写真は接合面の裏側で、わずかに盛り上がっている。内部まで熱を通し金属を溶け込ませることで、溶接がより強固になるのだ。表面を溶接しただけでは、試験をパスできないという。

■塗膜をはがさず直すデントリペア(杉山泰彦氏)

雹(ひょう)害を受けた車体。写真ではわかりづらいが、ルーフとボンネットに「えくぼ」と呼ばれる小さな凹みが無数にある。エース・オートサービスで修復を行った。
蛍光灯の光が歪み、凹みがあるのがわかる(左写真)。デントリペアは鋼板の裏からツールを差し込み、揉み出して凹みを直す(右写真)。杉山氏はツールの先で鋼板をなでると、わずかな凹みがわかるという。自分の指先のようにツールの先端にまで神経を張り巡らせているのだ。なお、前項の達人・長谷川氏によれば、この場合、デントリペアができなければ、パーツを取り替えざるを得ない。
職人ワザ! 40カ所以上の損傷を2時間で修復
大小合わせて40カ所以上あった凹みを、わずか2時間ですべて元通りにしてしまった。簡単な作業に見えたが、鋼板を知り尽くした長谷川氏でも「自分がやったら一つ直すのに1時間はかかる」と舌を巻く。難しい作業をこともなげにこなすのが、達人たる所以なのだ。デントリペアは修理のスピードが速く、塗装を活かすため、車の価値を落とさないのが利点だ。上中央の写真と左の写真は同じ箇所の修正前後。

■世界に一つしかないパーツを作る(矢作信幸氏)

わたびき自動車工業では、希少車種の修復や、オリジナルパーツ作成のため、まったく新しい鋼板を手作りする仕事を受けている。
厚さ1mmの平らな鉄板を叩いて、一から鋼板を製作。4枚の板を組み合わせて、曲線の多い複雑な形に加工した。左右対称で同じ形を2つ作らねばならず、職人には鋭い感覚が要求される。このとき矢作氏は、手に残る感覚を忘れないため、左右のパーツをおよそ30分ずつ、交互に打っていった。一度感覚を失ってしまうと、二度と同じものは作れないという。
職人ワザ! 100種類以上のハンドツール
感覚が命の職人ワザを支えるのはハンドツールだ。自分の手のように使いこなす必要があり、矢作氏は道具の9割を自作している。ハンマーだけでも鉄製、木製あわせて17種類。ほかにもドリーやタガネなど、ゆうに100個以上はある。今回見せてくれたのはほんの一部で、とても全部は道具箱に入りきらない。残りがいくつあるかは達人にもわからない。





 
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